STORY2021-04-30

FiTOを通して、 人と衣服の幸せな関係を 紡いでいきたい

作りたい服を納得いく価格で作れる世の中にし、「人と衣服の幸せな関係」を築くことを目指した縫製料金の見積りサービス「FiTO」は、いったいどのような経緯で誕生したのか。FiTOへの思い、日本の衣料業界への思いを株式会社フクルの創業者、木島広が語る。

木島 広

木島 広Hiroshi Kijima

株式会社フクル 代表取締役

2015年4月に株式会社フクルを設立。「サスティナブルな服作り」をビジョンに、衣服のマスカスタマイゼーションを事業構築している。

小さい頃からミシンの音を聞いて育ってきた

群馬県桐生市は、古くから繊維工業が盛んだった。京都から嫁いできたお姫様が機織りが得意だったことが起源だという。そこから機織りを生業にする人が徐々に増え、高度成長期になると、群馬県富岡市の富岡製糸場で製造された生糸を桐生で織り、欧米を中心に海外へと輸出するようになった。

衣服の見積アプリ「FiTO」を立ち上げた株式会社フクル代表の木島 広は、そんな繊維産地の桐生市で、縫製工場の次男として誕生した。

「小学校に行く途中、ずっと機織の音が聞こえ、用水路には染色した水が流れていました。父はもともと会社勤めをしていましたが、当時繊維産業が盛んだったこともあり、会社を辞めて縫製業をはじめたんです。1階が作業場で2階が住居だったので、小さい頃からずっと近くに縫製がありました」。

糸や縫製機器が並んでいる作業台

服作りの仕組みや、さまざまな働き方を学んだ会社員時代

高校卒業後、上京。文化服装学院でアパレルマーチャンダイジングを学び、アパレル用のサンプルを製造する株式会社レオパールに入社し、営業の仕事に就いた。

「東京の各所をまわって生地とパターンを受け取り、工場に作ってもらったものをまた納品するという仕事でした。仕事はうまくいっていたのですが、受注しすぎて工場がキャパオーバーになってしまって。“もう仕事とってくるな”と言われてしまったんです」と当時を振り返る。

その後入社したのは、あのコム・デ・ギャルソンだ。22歳のときにアルバイトとして入社し、正社員登用後、パターンナーを経てJUNYA WATANABEのチーフパタンナーに就任。9年在籍したが、「グローバルサプライチェーンの仕事がしたい」と31歳で退職した。

その後、イオンリテール株式会社に入社し、衣料商品開発に従事。プライベートブランドのトップバリュコレクションで、チーフクリエイティブデザイナーとして小売り起点のモノづくりに携わった。

「サンプル屋さんからはじまり、小・中・大企業と働けたのはいい経験でした。大企業だと社員に無理な働き方をさせず、社内でできないことは社外に頼ってお金で解決する。それはそれでいいやり方だと思います。“プロと一緒にどう仕事するか“という考え方を養うことができました」。

身振りを交えて会話する木島さん

「縫製工場を助けたい」そんな思いでフクルを創業

2011年、会社員を辞め独立。抱っこひもの製造・販売事業などを経て、2015年4月に株式会社フクルを設立した。きっかけは、縫製業界の厳しい現実を目の当たりにしたことだ。

生まれた時から生活の中に縫製があったため、良いことも悪いことも理解してきた。
高校卒業後も繊維産業に身を置くことで、ファッション産業の光と影を見てきた。
そのなかで、故郷の産地や家族が手塩にかけた衣服の多くが時代とともに粗末に扱われ、価値を失っていくことに心を痛めることが多くなったという。

「いま、衣服が大量生産され価格もどんどん安くなっています。消費者にとってはいいことですが、縫製工場は儲かりません。いくら国内の技術力が高くても、海外の低コスト品との価格競争になり、国内企業はさらなる危機に瀕しています。フクルは、衣服を求めるお客さまに、国内の高い技術を適正価格で効率的に提供するために創業しました」。

フクルでは、適時・適量で無駄の少ないサスティナブルな衣服を提供するため、新しい技術を使った衣服のマスカスタマイゼーション生産を行えるネットワーク構築を目指している。

「大手企業は大きなお金を回して事業を大きくするのが得意ですが、逆に、縫製工場のように小さな作業をコツコツ回すのは得意ではありません。企業と工場の間にフクルが入り、オートメーション化した仕組みづくりをする。私たちが緩衝材となり、工場さんの仕事を増やしていきたいという理念で取り組んでいます」。

特に、小さな縫製工場は受け身が多く、仕事を頼まれるとどんぶり勘定で受けてしまうことがある。そのため徐々に価格を下げられてきた。

「私たちが工場に適正価格で発注し、それに歯止めをかける役割にならなくては。そう思っています」と強く語る。

洋服がマネキンやハンガーにかかって並んでいる

起業からこれまで、フクルとして取り組んできたこと

フクルでは3つの適量生産を行っている。
「個別生産」「極小・小ロット生産」そして「大量生産」だ。
個別のお客さまにも企業にも、求められる適量の衣服の生産を行うことで、生産量と生産価格のバランスをコントロールしている。

一般的に、価格を低減させるための大量生産では、個別のお客さまの体型や趣味趣向に対応しきれない。また、今あるオーダーメイドでは、スーツやシャツの対応はあっても、ワンピースやスカートといったアイテムの対応がなかった。
フクルではそれを改善するため、衣服の種類や数量、個人・法人関係なくすべてのお客さまに対応できる提案を行なっている。

「ネットを介してお客さまの体型と趣味趣向に合わせた衣服を提供し、個人のお客さまにお喜びいただいています。また、デザイナーズブランドやアパレル企業からの高付加価値のある少数生産にも無理なく対応することで、ブランドのファンの皆さまに間接的にお喜びいただいています。もちろん、一緒に衣服の生産に取り組んでいただける職人さん、工場さんとのモノづくりをできる日々の暮らしをとても大切にしています。これからのフクルは『More Healthy Apparel』をスローガンに、衣服生産をもっと健全にしていければと思っています」。

身振りを交えて会話する木島さん

服を作りたいお客さま向けの新サービス「FiTO」

そんなフクルが新たに立ち上げたサービスが、衣服の見積りアプリ「FiTO」だ。

「FiTOの魅力は、とにかく簡単に見積れること。『いますぐ見積り』であれば、概算の見積もりをその場で確認することができます。
そこから見積り依頼を経て、工場発注まで同じ画面の中で行える利便性がすべてじゃないかと思います。見積り内容もすべて明瞭になっているので、依頼工程の一部をお客さま側で行うことで工場側の負担が減り、見積り金額も下がる仕組みになっているので、“何にいくらかかっているか”を知ることができるのも面白いと思います。
服を作りたいと思う人にも使ってほしいですが、取引先から見積り依頼を受けた縫製工場の皆さんにも自分たちが行っている仕事の価値が適正価格に見合っているのかの尺度としても使ってほしいですね」。

FiTO トップページ画面
「おまかせ見積もり」と「いますぐ見積もり」の選択画面
見積もり商品のカテゴリを選択している画面

これからのFiTOの役割とは

今後、縫製業界は一体どうなっていくのだろう。FiTOは、どんな役割を担うべきなのだろうか。

「これまで、縫製工場は理由もなく縫製工賃が下がり続けてきました。これからは、『健全な消費を行いたい』と思えることに心の豊かさを感じる未来がくると信じています。作り手の縫製工場に持続可能な環境を、売り手に自己表現としての衣服の生産販売を、買い手に暮らしを豊かにする衣服を。そんな『人と衣服の幸せな関係』をお届けしたい。それが私たちの使命です」。

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取材・撮影株式会社necco

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